視認範囲のインプレッション単価/CPCとvCPMの選択基準

視認範囲のインプレッション単価制(vCPM-viewable Cost Per Mille)とは、視認範囲のインプレッション1,000回あたりに対して課金がされる単価制度。視認範囲と見なされるには広告面積の50%以上が画面に表示され、かつディスプレイ広告では1秒以上の表示、動画広告では2秒以上の再生があった場合となる。以前は「視認範囲」でなくとも課金対象となっていたが、今は課金対象となる表示は全てが「視認範囲」で表示された場合のみとなっている。

vCPMの計算:( 費用 / 表示回数 ) * 1000

ディスプレイ広告:面積の50%以上が画面に1秒以上表示
動画広告:面積の50%以上が画面に表示され2秒以上再生

視認範囲となったかはアクティブビューという技術で判断しており、下記ページでアクティブビューとなるタイミングを体感することができる。

> Viewability in action

Google広告のディスプレイ広告には2種類の配信方式があり、1つはクリック単価制(CPC)もう1つは視認範囲のインプレッション単価制(vCPM)となる。要はサイトへ遷移させダイレクトレスポンスを目的とするならばクリック毎に課金対象となるクリック単価制と採用し、インプレッションを最大化させ認知を向上させることが目的であれば視認範囲のインプレッション単価制を採用する。

というのが一般的な視認範囲のインプレッション単価制の説明としてよく見かけるものをまとめたものだけど、さらに深掘りして視認範囲のインプレッション単価制についての考察を続ける。

その前に、まず最初に当記事において述べたいことを提示しておくと、考えるべきことは2つあり、それはvCPMとCPCのそれぞれの特性と広告配信におけるコンテキストを含めて判断するということ。そうすれば最適な入札戦略を選択することができ、マーケティング目標を最大限に達成することができる。

視認範囲のインプレッション単価制(vCPM)とクリック単価制(CPC)の違い

[su_quote cite=”KPIの新たな潮流 -ビューベースリーチを可視化する” url=”https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/articles/display/vcpm/”]・vCPM運用は、特にモバイルにおいてビューベースのリーチが高まり、リーチ単価が低くなる。
・CPC運用は、vCPM運用に比べCTRが高い。
・vCPM運用とCPC運用では、ビューベースで異なる層にリーチできる。[/su_quote]

vCPMの方がCPCと比べてリーチ数がなぜ伸びるのかについて、上記参照サイトには記載されていないが理由の1つは広告ランクにある。

[su_quote cite=”ディスプレイ ネットワークの広告オークションについて -Google 広告 ヘルプ” url=”https://support.google.com/google-ads/answer/2996564?hl=ja”]各広告主様の広告は、広告ランクによって順位付けされます。広告ランクの基準となるのは、設定された上限クリック単価と品質スコアです。そのため、品質スコアで大きく差をつけていれば、入札単価が高い他の広告主様よりも上位のランクを獲得することが可能です。[/su_quote] [su_quote cite=”インプレッションに基づく入札について -Google 広告 ヘルプ” url=”https://support.google.com/google-ads/answer/2630842?hl=ja”]この2種類の広告を同一条件で比較します。vCPM広告における視認範囲のインプレッション単価の上限額は、視認範囲のインプレッション1,000回あたりに対する支払い可能な上限額を表します。クリック単価(CPC)広告では、 1,000回のインプレッションで発生するクリック数を推定して比較します。[/su_quote] [su_quote cite=”Viewabilityで先手を打つGoogle。GDNの「CPM」は「vCPM」へ移行し、100%ビューアブル配信へ。” url=”https://unyoo.jp/2015/10/vcpm-adwords/”]広告ランク = 上限CPC × クリック率
      = 上限CPC × クリック ÷ インプレッション
      = 上限コスト ÷ インプレッション
      = 上限インプレッション単価[/su_quote]

プレースメントへの配信に対してvCPMとCPCが競合する際は同一条件で比較するために広告ランクが使われる。両者の大きな違いがCPC配信ではクリック率が広告ランクの算出に大きな影響を与えるのに対して、vCPMでは設定時の上限インプレッション単価が広告ランクそのものとなる。ちなみに広告ランクに使われる「クリック率」というのは「推定クリック率」のこと。この推定クリック率が低くなることが予想されるプレースメントにおいては広告ランクが低くなり、同一のプレースメント枠の競争に負けてしまうことや、競争する以前に広告ランクの下限値にひっかかりステージにすら上がれないことがある。

対してvCPMでは上限インプレッション単価が広告ランクとなるため、CPCでの配信が難しかったプレースメントにも配信が可能になりリーチ数を伸ばすことが可能になる。要は、運用者側で制御するのが難しいクリック率に左右されずに、上限インプレッション単価で広告ランクを制御できるので、その分リーチを広げることができるということ。

参考サイト -Google広告 ヘルプ
・推定クリック率
・広告ランクの下限値: 定義

視認範囲のインプレッション単価制(vCPM)の目的

[su_quote cite=”ブランディング強化のためのディスプレイ広告におけるvCPM配信” url=”https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/articles/display/vcpmbrandimpact/”]広告戦略を立案するにあたり、vCPM配信とCPC配信のどちらが優れていると一概に判断することはできません。大切なことは、マーケティングコミュニケーションの目的によってそれぞれの持ち味を生かして使い分けるということでしょう。[/su_quote]

必ずしも広告のクリックを必要としてはおらず、企業のブランディング強化が目的である場合はCPC配信よりもvCPM配信が適しているという説明は間違いではないが、vCPMが適しているケースはこれだけではないし、必ずしもブランディング強化の為だけに使わなければいけないという訳ではない。またコンバージョンを計測していないからvCPMを選択しているなど、計測環境から配信方式を決めてしまうのもよくない。ここでは「認知度向上・ブランディング強化であればvCPMが適している」などの曖昧模糊とした解説はせず、他では一切触れていないvCPMの使い方を明晰に解説する。

まずvCPMかCPCかの配信方式を選択するにあたり、主に3つのことを考慮する必要がある。それによってvCPMかCPCのどちらを選択するのかを判断できる。

目的 > CVに至るまでの期間 > LPによる態度変容

目的が認知度向上であるかダイレクトレスポンスを狙ったものであるかでvCPMもしくはCPCを選択するかの判断は大枠でできるが、CVに至るまでの期間とLPが存在するかによっても選択の判断が異なってくるし、他にも様々なケースが考えられるため一概にこうだと言い切ることはできない。なので下記でまとめた表は、あくまで参考程度として頂きたい。

[su_table]
入札戦略 目的 CVに至るまでの期間 計測方法
vCPM 認知度向上 長期 ブランドリフト
vCPM 認知度向上 → 間接的なダイレクトレスポンス 中長期 ビュースルーコンバージョン
vCPM or CPC メッセージ伝達 → オフラインでの行動促進 (LPにおける態度変容) 来店コンバージョン
CPC ダイレクトレスポンス 短期 ページ到達等のコンバージョン
[/su_table]

認知度向上

認知度向上とは将来的に顧客となりうるターゲットに対して広告を通して認知させる施策であると私は定義する。なので「将来的に顧客となりうる」というのがポイントでここを考慮に入れないと何の意味も成さない広告配信となる。つまりは、認知度向上を目的とした配信とは”計測不可能”な起点コンバージョンを最大化させることでもある。

なぜかインターネット広告では認知度向上を目的とした配信の場合、ノンターゲティングにするという謎の先行概念があるが、例えばオフライン広告に置き換えてみて、どの場所でもいいから看板を設置するという施策は取らないですよね。それと同じでインターネット広告においてもどこに誰に広告を認知させるのかはある程度決めておくべき。なぜなら将来的に顧客となりえない層にリーチを広げても広告費用の無駄だから。予想外のセグメントにリーチをかけることで将来的な顧客を構築することができるかもしれないけど、ノンターゲティングで配信したデータからは検証することはできないし、それは広告の配信前のシナリオ設計でするべきことですよね。簡単にいうと、ノンターゲティングで配信することを「認知度向上」とすると説明範囲が広くなりすぎて言葉の意味を成さなくなるのです。

また、表示回数をKPIと設定してしまいフリークエンシ−キャップの制限をかけてしまうことも誤った設定となる。なぜなら直近の目的は「視認」させることではなく「認知」させることだから。広告を1回2回「視認」されたところで「認知」されることはないから。0にいくら掛けても0なので認知に繋がらないリーチ数を広げたところで、全くの無駄配信となる。では何回、広告を当てればいいのかというと、正直今の知識レベルだと解説することができない。ここから先は統計的分析も必要になってくるので個人的に興味があるトピックなので今後の課題としている。

あと運用経験上、ノンターゲ配信にしても既にサイト訪問ユーザーに対して多くリーチがかかることもあるので、オーディエンスリストをモニタリング配信しておくことをお勧めする。(過去にノンターゲティング配信でありながら7割近くがサイト訪問済みのユーザーであったことがあった)このことからノンターゲティングでも、何かしらの「ターゲティング」が適用されている可能性も考えられる。この対処法としては、サイト訪問した回数を条件としてリマーケティングリストを作成して除外することが良い。なぜなら複数回サイト訪問したということは、既に「認知」という目的は達成されているから。

認知度向上 → 間接的なダイレクトレスポンス(商戦時期を確実に勝ち取るための戦略)

年間を通して顧客からの申し込みを受け付けておらず、特定の時期に多く問い合わせがくるようなケース。例えば大学入試や卒業式の袴のレンタルなど。このケースでリスクとなりえるのは、商戦時期から広告を配信しても、既に顧客の購買先の意思決定が済んでいることがあり、それを覆すことが難しくなること。なので商戦時期の期間のみ広告を配信しても十分な効果を出すことができず機会損失が生まれる。

そのため、インターバル期間を設定しこの期間にvCPM配信を行う(正確に連動しなければいけないということでもなく、この期間は入札単価を強めて配信を行うなど)このインターバル期間はクライアントがすでに把握しているはずなので確認しておく。

事前に社名などのメッセージを認知させておくことで、事前に選択の土俵に上げておくことで、そのタイミングになった際に顧客のアクションを逃さないようにする。事前に認知させておくことが目的なので、LPに遷移させる必要がないし、特定の期間の受け付けているのであればなおさらLPに遷移させる必要はない。広告だけで社名などのメッセージを顧客に認知させることができればよい。なのでCPCではなく、配信費用が安価になりリーチを広げることができるvCPMを選択する。このvCPMで配信した期間にLPへ流入した顧客は確度が高いので、商戦時期にRLSAの施策として活用できるのでオーディエンスリストを作成しておく。

メッセージ伝達 → オフラインでの行動促進

ユーザーにとらせるアクションがオフライン上のものであれば、広告にオフライン上の行動に移させる必要な情報を十分に含ませることで、必ずしもサイト遷移を必要としないケースがある。このようなケースでは通常vCPM配信が選択されるが、LPに遷移させることで態度変容が起こるのであればCPCを採用したい。つまりはLPに遷移することでよりオフラインでのアクションが推進されるのであれば、クリック率がvCPMよりも高いCPCを選択する。例えば、選挙日などの認知を広める場合は、選挙投票のアクションを促すことに対して、LPの果たす役割はあまりないと思う。というのも選挙に行く行かないはLPにより意思決定を変化させることは難しいのと、選挙へのアクションがハードルが低いものなので、広告でメッセージを伝えることができればそれで十分だと考える。

もう一つの事例としては、メーカー側から小売店への来店を促進するために広告配信をしているケース。この場合では商品の認知度拡大のためvCPMを選択する人もいるかもしれないけど、まず目的から考えると小売店への来店なのだからCPCが適している。なぜなら「来店」というかなりハードルの高いアクションをとらせるためには、LPの力が必要だから。普通に考えてバナー広告を見て、気になったら商品の詳細ページを見てから判断して実店舗に足を運ぶか検討するだろう。バナー広告を見て、いきなり来店というのは考えにくい。このケースではLPをがユーザーの態度変容に対して非常に貢献しているので、vCPMよりもCPCが適しているといえる。

参考サイト -Google広告 ヘルプ
・目標に合わせた入札戦略を選択する
・視認範囲のインプレッション単価について
・インプレッションに基づく入札について
・視認性とアクティブ ビュー レポートの指標について

参考サイト -Think with Google
・ブランディング強化のためのディスプレイ広告におけるvCPM配信
・KPIの新たな潮流 -ビューベースリーチを可視化する

その他参考サイト
・Viewabilityで先手を打つGoogle。GDNの「CPM」は「vCPM」へ移行し、100%ビューアブル配信へ
・ディスプレイ広告の2つの役割と効果測定方法 -Digital Marketing Lab



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