LP(ランディングページ)の構成と改善が学べる書籍について紹介する。なおすべて読了した上での解説であり、自身もランディングページの制作は行わないが、主に「改善」や「分析」などは頻繁に業務を行っているため、実務に役に立つかの判断としては間違いない視点を提供できるかと思う。
LPの書籍で取り扱っているカテゴリーはいくつかに分類でき、何を目的とするかによって手にする書籍が異なってくる。以下にLPの書籍のカテゴリーを分類した上で、特に良かった本を抜粋する。
目次
抜粋【最も参考になった書籍】
LPを構成する各パートのテンプレートやコツを学ぶのであれば『ビジネスを加速させるランディングページ最強の3パターン制作・運用の教科書』一択。ユーザー心理を深堀りしてLPで成果を上げるためのコンテンツの書き方が学べる。
LPが既にあり「改善」が目的であれば『コンバージョンを上げるWebデザイン改善集』がCVRを改善するための事例が豊富であり、仮説立てと実行に移す施策のアイディアの引き出しが増えるのでかなりお勧めの1冊。またある程度の「正解」の型が本書を読むことで分かるため、初めに「正解」の定石をインプットすることでLPの制作にも役に立つだろう。
LPの構成を学ぶ上で土台となる視点として個人的に最も大切だなと思われることが書いてある書籍としては『売れるWEBデザインマーケティングの法則』を強くオススメしたい。ユーザーの心理から逆算してLPを設計することが、教科書通りに作成するよりも本質を突いた優れたLPとなりうる可能性がずっと高くなる。
LPの構成・改善が学べる本【最新順】
『売れるWEBデザインマーケティングの法則』
本書のタイトルが「Webデザイン」となっているためデザイナー向けの書籍のような印象を受けてしまうが、「デザイン」がメインのトピックになっているわけではなく、Webデザイナーに関わらずサイトのCVRの改善を課題に抱えているのであれば誰が読んでも有益な情報が得られる内容となっている。であれば『売れるUXデザインマーケティング』とか本書の核心である「顧客心理逆算式」をタイトルに含めた方が良かったのではないかと感じた。というのもサイトのCVR改善に課題を抱えているターゲット層もそうだし、本書で扱うユーザー心理を元に改善を図るのであれば単なる「Webデザイン」という枠に収まるものでもないから。このようにいささか書籍タイトルが一世代前というか、肝心のターゲット層にスルーされてしまうであろうタイトルにもったいなさを感じる。
サイト改善にあたっては本書が説くように、一般的なペルソナ設計をしたところで役に立たないといったところだろうけど、正に同感であり年齢がいくつで、職業は何で、趣味は何で、休日は何してるとか、どうでもいいことを想像したところでサイト改善には1ミリも役に立たないだろう。このことに対して疑問に感じている人も多いと思うが、いわゆる教科書的なアプローチを学んだところで、実践では全く役に立たないということ。本書の最も優れているのはこの点にあり、サイト改善もそうだし、Webマーケティングを行う上で本質的に重要なことを体系立てて解説している点は類書には存在しない。このようなことは本書以外にはあまり触れられていないため、実際の現場でサイト改善を進める上で本質的な思考を元に分析し改善を進めるにあたって大変参考になると思う。
まとめていえば、まず考察すべきなのはユーザー心理であるということ。ここが欠けてしまうと大きな機会損失を生みかねないということを、本書を読み進める上で何度も感じたことだ。これが「顧客心理逆算式デザイン」であり、これは流行り廃りの類のものではなく本質を突いた視点であると思う。つまりはこのような視点を持つことが最も重要であり、流行り廃りのワードに振り回されないためにも、本書を読んでWebマーケティングの知見をより深めていく土台としての思考を学ぶことができる良書だと思う。
『ビジネスを加速させるランディングページ最強の3パターン制作・運用の教科書』
LPを制作するにあたり、コンテンツの論理展開をかなり詳しく解説した書籍。もう少し詳しくいうと、LPの分類をユーザーのニーズに合わせてPDLモデルと称し3分類化し最大公約数的に最適な論理展開を解説している。LPの構成に関してはPASONAの法則など鉄板のテンプレートがあるものだが、このような「法則」を活用する上での最大のデメリットは、その「法則」ありきとなってしまい「ユーザーファースト」ではなくなってしまう点にあるかと思う。例えば以前経験したことだが、細かいトピックに関してもPASPNAの法則で書くように指摘をされたことがあったが、まず頭の悪い人の特徴の一つとして「馬鹿の一つ覚え」となってしまい、コンテキストを全く考慮に入れないことが挙げられるかと思う。私の経験した例でいえば、事例が多く並ぶようなトピックは完結に説明することでユーザーの満足度は達成できるわけで、わざわざPASONAの法則ですべて書くとか、思考回路が浅はかすぎてついていけないと感じたことがあった。
本書の最大の功績は著者の経験を元に、ユーザーの置かれているコンテキストを考慮した上でLPの成果を最大限上げることができるモデルを再構築した点になる。おそらく「ランディングページ」と検索すると多くの情報がヒットすると思われるが、そういったものの多くはただ単に「ランディングページ」で上位表示を狙ってWeb上の情報を寄せ集めて切り貼りして作成されたもので、Webページの1ページ程度で得られる情報がたかが知れている。その点、本書は約250ページあるわけで、仮に本書の内容が全てWebページに上げたならば間違いなく検索1位を獲得できるだろう。なので、そういったWeb上で「ランディングページ」に関する情報を探すよりも、本書を繰り返して読む方が遥かに有益だといえる。
本書はいわゆる縦長のLPのコンテンツ設計に関してを扱ったものであるが、SEOを重視した「情報提供型LP」の場合、検索流入数は確保できるがCVRが低下するデメリットがある。このような「情報提供型LP」であっても、CVRを改善するためのヒントが多く記載されているため改善の手引きとしても参考になる。少し例を挙げれば「情報提供型LP」の多くはユーザーの不安を解消するパーツが不足しているがためにCVRが低迷しているケースが多い。本書の内容を繰り返し読むことで、本質的には「ユーザーニーズを読み解くことでCVRを改善する」考え方が身につくわけで、それはランディングページと呼ばれるものだけに限らず、どのような媒体に限らず応用が効くようになるだろう。
例えばPDLモデルは広告にも活用できるはずで、具体例を挙げれば現状ネット広告の「ディスプレイ広告」ではPモデルが多用されているが、Lモデルに切り替えることで大幅にCVRが向上できる見込みがある。ただ「特徴」をアピールするだけの単純な見せ方だけをしているのであれば、非常にもったいないといえるので、本書を読むことで確度の高い切り口の視点を得ることができる。
『デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか? 』
本書はランディングページを専門に取り扱ってはいないが、ランディングページだけを取り扱った他書とは異なり、「デジタルマーケティング」全体からユーザーが最初に着地する広義の意味で「ランディングページ」の「位置付け」を包括的に取り扱っている点が最大の特徴である。
その意味でまず「ランディングページとは」を始めに理解する上で示唆に富む内容が多くあるので最初に読むべき1冊だと言える。
内容全般を通して高尚かつ明快な物言いで書きつづられており、本書のような知的な文章が最初から最後まで読了することができない人は、間違いなく「3秒以上」Webサイトに留まりコンテンツを読もうとはしないだろう。世の中の大半は著者とは異なり「文章が読めない」層が大半を占めており、ランディングページのファーストビューが与える情報の一発勝負であることは真理である点は私も同意できる。
このような特定の「場面」を切り取った解説が本書では多いが、それは「説明能力」を高めるためであり、必ずしも「事象」を正確に描写した解説ではないという点に注意を払う必要がある。誤解のないようにいえば本書が「現実を正確に説明できていない」ということではなく、「事象」を説明する側面に注力しているということである。
「理論」というのは事象を「捨象」することで成り立つものであるので、本書の内容が「全てを説明できていない」「重要なことを切り捨て過ぎている」といった批評は、つまりは的外れとなる。事象を細かく説明すればする程、細微な事象を説明する解像度は上がるが、「理論」としては反対に落第点が多く付くことになる。いうなれば、反対に本書について「内容に完全に同意」といった見解も「理論」と「現実」の分離が成されていない点で、「権威性」がある立場にある人に対してただへつらう態度があることがあからさまであり、物事を一辺倒に捉えている点で「批判」と変わらず浅はかな見解であり危険性さえ伴っているといえる。
個々のトピックについてここでは解説しないが、本書を読みすすめる上で他では賛否両論という極端な意見が多い中で、「理論」を学ぶ上で基本となる土台の知識なしに語られることが多いと感じたのでここではその点について解説した。
『コンバージョンを上げるWebデザイン改善集』
本書はいわゆる縦長LPを含むWebサイトにおけるCVRの改善Tipsを盛りだくさんに掲載したアイディア集といったテキストとなっている。基本的な構成として改善ポイントをBefore・Afterと共に解説されており、読むだけでWebサイトの改善アイディアの知見が増えることが本書の最大のメリットかと思う。CVRを上げるためのWebサイトのパーツ改善の定石集ともいえ、書籍タイトルでは「Webデザイン」とあるがデザイナー向けの「デザイン」自体をどうこう議論した内容ではなく、あくまでCVRを向上させるために「Webデザイン」を構成する「パーツ」改修の施策を寄せ集めた内容をイメージした方がよい。『デジタルマーケティングの定石』がマクロ的にWebサイトの定石を扱っているのに対して、本書はもっと具体的にサイト内を分析した結果、CVRを向上に貢献したWebサイトのパーツ改修を取り扱った定石集といえる。とはいってもWebにおける「定石」は多くの変数に影響を受けるため、必ずしも打った施策が改善につながるかといえばそうならないことも多い。このことは本書にも書かれていあるが、そのような失敗した施策も成功するための施策の布石になりえるので決して無駄とはならないだろう。
つまりはすべてはコンテキストに左右されるのであり、悪手と見られるデザインであってもユーザー目線で見れば大した問題とは受け取られておらずCVRの低下にもつながっていないケースもあることも一考の余地として残しておきたい。対してやはりCVRの低下につながっているデザインもあるわけで、本書はまずそのような「部品の改善」にまず着手した方がよいことを説いた書籍である。つまりはWebサイトを構成している多くのUI・UXはユーザーにとってはどうでもいいものであるが、一部よろしくないWebデザインによってCVRの低下を招いているものも確かにあり、決してWebサイト全体がCVRの低下に影響を与えているのではないことを理解することである。この点に無理解であると一気にサイトリニューアルどうこうという話に突飛し改善どころかサイトリニューアルで改悪となることはよくあることだからだ。
≫ 参考:Webサイトはリニューアルによって改善するのか?WebサイトリニューアルとCV・CVR向上の相関関係についての調査 -WACUL
結局のところサイトリニューアルをしたとしても同じくCVRの低下につながっている「Webデザイン」は必ず出てくるわけで、とどのつまりCVRの低下を招いている「Webデザイン」に着目しピンポイントで改善しなければ、CVRの改善はおろか、サイトを改善していくPDCAを回していく視点を持つことが不可能であることを理解すべきである。本書はそのようなWebサイトを改善するにあたり問題点となる仮設を多くTips化し、どのように改善すれば良いかまで解説しているため、いうなればサイト改善を継続的に行うための最高のテキストといえる。
類書とは異なる切り口でランディングページの改善を解説した内容で特に感銘を受けたので、個別に書評記事まで書いてしまったが、逆によく書きすぎてしまってほとんど売れなかったが、あまりに良く書きすぎるとかえってCVRが低下することも分かってよかったといえる。
『2万回のA/Bテストからわかった支持されるWebデザイン事例集』
構成としては『コンバージョンを上げるWebデザイン改善集』と近しく改善前のページに対して問題はどこにあるかの「仮説」を立て施策を実施した結果どうなったかというもの。どれくらいの改善が達成できたかの「改善率」の記載はあるが、これは「率」ではなくて「前比」の間違いなのではないか?まあ「率」だと読み替えるとして、ほんの僅かな改善率であっても「改善」として掲載されているため、いささか疑問を感じた。だが本質は、どこに「問題点を見出して仮説を立ててどのように改善したか」というプロセスが重要であるため、豊富な事例は参考になるものが多かった。本書の紙面の多くは「事例」となっているが、この本編に入る前の導入部分のパート部分も参考になる記載が多く、特にサイトを構成するユニットの役割分担の解説はサイト改善に着手する上で基本的な枠組みとして参考になった。このようなBefore/Afterの事例集は何回も読むことであたかも自身の経験値としてインプットすることが可能であり、先駆者の経験値をインストールできるという点が最大のメリットとなるだろう。
『現役LPO会社社長から学ぶ コンバージョンを獲るランディングページ』
ランディングページの構成要素と各パートについて詳しく書かれている。つまりは、ユーザーにアクションを取らせるための文章構成はどのようにすべきか?が完結にまとまっているため、オーソドックスな縦型LPのフレームワークを知りたいのであれば本書は最適な1冊となるだろう。同じカテゴリの書籍は『ビジネスを加速させるLPランディングページ最強の3パターン』が挙げられるが、正直中身のボリュームやユーザー心理の分析力など読み応えがあるのは、こちらの『ビジネスを加速させるLPランディングページ最強の3パターン』に軍配が上がる。だからといって、本書は読む必要性はないのかといえばそういうことはなく、著者の経験による解説では「なるほど」と思えるような視点が多くあり大変参考になった。特に「ベネフィット」を導き出すための手順やそもそも「ベネフィット」とは何かを理解する上で分かりやすく説明がされている。
『ランディングページ 成果を上げる100のメソッド』
本書では主に「ランディングページとは」といった「ランディングページ」について基本的な解説をしたパートと、Googleアナリティクスを用いてランディングページの分析・改善について解説したパートに分かれる。Googleアナリティクスを用いた解説ページが多い印象が強く、「ランディングページ」の作成方法というよりも、既存のランディングページの改善に焦点を当てており、一般的なGoogleアナリティクスの解説本を読んでいる感覚になる。またランディングページの構成やレイアウトなどのUX的視点からの改善事例も豊富にあるため参考になる。このように既に出来上がったランディングページをGA・UXの観点からどう改善するかの解説がメインとなっているため、序章や終章にLPの制作や、さらにコーディングまで踏み込んでおり、この2つのトピックの扱う範囲が広すぎているため基礎的な解説にならざるをえず、本書が誰をターゲットにしたものなのかが不明瞭と感じざるをえない。というのも「コーディング」に関しての実装や最適化について少し紙面が割かれていても、おそらく読者層はそのような製作者として本書を読んでいないと思うし、対して本書の序盤では「制作」とは真逆の立ち位置で解説されているため、ちぐはぐ感を強く感じてしまう結果となってしまっている。おそらく共著という形なのでこのような寄せ集めた構成となってしまったのかと思われるが、LPの改善に関してのパートは参考になる点が多く、アナリティクスの活用などは広告の分析にも応用でき、分析視点としてよくまとまっていると感じた。